黒字なのに直せない?久喜市の水道事業に潜む“静かな危機”
■ 黒字なのに、なぜ更新が追いつかないのか
久喜市の水道事業は、数字だけ見ればとても健全です。
経常収支比率は116%、料金回収率は104%、毎年5億円以上の純利益を出しています。
つまり「黒字経営」。資金に余裕があり、すぐに赤字に転落するような状況ではありません。
ところが、実態を見てみると、老朽化は着実に進み、更新が追いついていません。
久喜市全体の水道管の総延長は約917km。
そのうち40年以上経過した管が約154km――全体の**17.6%**を占めます。
全国平均(約15%)よりも高く、老朽化のスピードは加速しています。
年間の更新率は0.7%。
単純計算では、すべての管を取り替えるのに約143年かかる計算です。
本来であれば、耐用年数40年を維持するために毎年2.5%程度の更新が必要とされます。
では、なぜ黒字なのに直せないのか。
理由は「お金がない」ではなく、「仕組みと判断が止まっている」からです。
■ 予算はある。でも執行できない。
久喜市の「水道ビジョン(経営戦略)」では、
年間およそ10kmの管路更新を計画しています。
しかし、令和5年度の実績は約6.4km(達成率64%)。
予算は確保しているのに、実際に工事まで進んだのは6割にとどまりました。
背景には、いくつかの構造的な課題があります。
優先順位の基準が「漏水対応ベース」で、計画的更新が難しい。
AIやリスク評価などの新技術導入が先送りされている。
技師不足により、現場判断が属人化している。
つまり、お金はあっても、動かす仕組みが整っていない。
そして「黒字を維持すること」自体が目的化し、
結果的に投資のタイミングを逃しているのです。
■ “黒字を守る”が“未来の赤字”をつくる
行政の世界では「黒字=良い経営」という評価が根強くあります。
もちろん、赤字よりは黒字の方が健全に見えます。
しかし、水道事業において「黒字」は必ずしも安全ではありません。
なぜなら、設備更新を先送りすれば、
10年後・20年後に一気に老朽管が集中し、
そのときに巨額の費用が発生するからです。
つまり「今守っている黒字」は、
将来の赤字を先送りしているだけなのです。
“節約”が“放置”になってしまえば、
いざという時に「水が止まる」リスクを高めることになります。
■ 全国ではAIで“壊れる前に見つける”動きが進む
一方、全国ではすでに「壊れる前に見つける」仕組みづくりが進んでいます。
静岡市:衛星データとAIで漏水リスクを地図化。
山梨県北杜市:AI診断で更新対象を3割削減しながら、漏水リスクを半減。
宇都宮市:AIが漏水音を解析して、従来より高精度に漏水箇所を特定。
京都市:下水管のカメラ映像をAIが自動解析し、劣化を自動判定。
Kubota×東京大学:AIで上位20%の管だけを更新しても、漏水を半減できることを実証。
AIの導入は「夢物語」ではなく、すでに現実の選択肢になりつつあります。
久喜市でも、まずは一部エリア(たとえば漏水の多い栗橋・菖蒲地区)で
AI診断のパイロット導入を行えば、更新効率は飛躍的に向上する可能性があります。
■ “黒字を守る”より、“未来を守る”へ
財政が健全な今こそ、判断を変えるチャンスです。
「黒字だから大丈夫」ではなく、
黒字のうちにどれだけ“未来に投資できるか”。
水道は、市民生活の基盤そのものです。
壊れてから直すのではなく、
壊れる前に守る仕組みをつくる。
それが、私が考える「予防の政治」です。
久喜市から、仕組みで健康とインフラを守るまちづくりを。
まとめ
久喜市の水道管の約17%が耐用年数を超過
年間更新率0.7% → 全更新に143年
年間10kmの計画に対して実績6.4km(達成率64%)
財政は黒字(経常収支116%、利益5.3億円)
課題は“お金”ではなく、“判断と仕組み”
AIによる「壊れる前に見つける」時代が始まっている
「健康も、インフラも、壊れる前に守る。」
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